長時間のデスクワークが引き起こす巻き肩〜肩こり予防と姿勢改善のコツ〜

身体問題

姿勢が悪く、肩が前に出された巻き肩(ラウンデッドショルダー)は、見た目だけではなく深刻な健康被害をもたらします。肩こりや首こり、背中・腰の張りや痛み、血流を悪く呼吸を浅くし、そこから広範囲に体調不良につながります。

本記事では、巻き肩を自分で治せるストレッチ、予防法などを詳しく紹介しています。巻き肩を解消して姿勢を良くし、こりや痛み、だるさなどの体調不良から抜け出しましょう!

巻き肩(ラウンデッドショルダー)とは

巻き肩(ラウンデッドショルダー)とは、肩が前方に傾き、胸が内側に引き込まれる姿勢の乱れを指します。この状態では肩甲骨の位置がずれ、背中が丸くなることで姿勢全体のバランスが崩れます。

現代ではデスクワークやスマートフォン、タブレットの使用時間が増え、肩を前に出す姿勢を長く続ける人が増加しています。その結果、肩や首、背中の筋肉に不均衡が生じ、痛みやこり、疲労感が起こりやすくなります。

巻き肩になりやすい姿勢と生活習慣

巻き肩は、肩が身体の中心より前方に位置し、両肩が丸まるように見える姿勢です。この姿勢では肩甲骨が外側に開き、背中が広がるような状態になります。長時間同じ姿勢で仕事をしたり、パソコン画面を前のめりで見たりすることで、胸の筋肉(大胸筋)が縮み、背中の筋肉(僧帽筋や菱形筋)が伸びたまま弱くなります。こうした筋肉のアンバランスが、巻き肩を慢性的に固定させる原因になります。

巻き肩が引き起こす主な不調

肩こりや首の痛み

肩が前に出る姿勢では、頭部の重心が前方にずれ、首や肩周囲に過剰な負荷がかかります。その結果、僧帽筋や肩甲挙筋などに持続的な緊張が生じ、慢性的な肩こりや頭痛を引き起こす要因になります。

姿勢の悪化

巻き肩は全身の姿勢に影響します。肩が前に出ることで自然と背中が丸くなり、骨盤が後傾しやすくなります。
これにより猫背やストレートネックが進行し、体幹の安定性が下がります。姿勢の崩れは外見的な印象だけでなく、集中力や呼吸の深さ、内臓機能などにも悪影響を及ぼします。

呼吸の浅さ

肩が前方に傾き胸が圧迫されると、肺の拡張が制限されます。その結果、呼吸が浅くなり、体内の酸素循環が十分に行われにくくなります。この状態は疲労感やだるさを感じやすい体調の一因となります。

巻き肩を改善、要望するには?

巻き肩(ラウンデッドショルダー)を防ぐためには、日常姿勢の意識と筋肉バランスの調整が欠かせません。特別な運動やストレッチの前に、まずは巻き肩を作らない生活習慣を意識しましょう。大胸筋や小胸筋などの胸の前の筋肉、背中や肩甲骨回りの筋肉を意識してください。

長時間のデスクワークでは、30分~1時間に1回は立ち上がります。そこで背伸びや肩回しを行うと、筋硬直がほぐれ血流が回復し、巻き肩になるのを防げます。ねこ背で巻き肩になった姿勢を、長時間、維持しない。固まりきってしまう前に、筋硬直をリセットする。これが基本です。

巻き肩改善に必要なアプローチ

それでは、少し踏み込んだ本格的なアプローチに入ります。上記の基本を守るだけでも効果は期待できますが、より徹底的にケアしたい、巻き肩になってしまったのを修正したい、という人は、積極的な取り組みを習慣にしてください。

巻き肩は、筋肉の硬さと使い方の偏りによって生じる姿勢の乱れです。そのため、生活習慣の修正とストレッチによる筋肉の柔軟化が、取り組みの中心になります。胸の筋肉が硬くなると肩が前に引かれ、肩甲骨が外に広がるため、胸を開く方向性が中心になります。以下では、自宅でも安全に行える具体的な方法を紹介します。

大胸筋ストレッチの基本

大胸筋は、胸郭の前面に広がり、肩を前方に引く働きを持つ筋肉です。この筋肉が硬くなると巻き肩を誘発するため、ストレッチによって柔軟性を回復させます。

壁を利用した大胸筋ストレッチ

  1. 壁の前に立ち、片手を肩より少し上の位置で壁に添えます。
  2. 手を固定したまま、上体を反対方向(手と反対側)へゆっくり回します。
  3. 胸の前面に伸びを感じながら、15〜30秒静止します。
  4. 呼吸を止めずに深呼吸を繰り返します。
  5. 反対側も同様に行います。

この方法では、肩を過度に引かず、胸前の筋肉をじわりと伸ばすように意識します。

ドアフレームを利用した大胸筋ストレッチ

  1. ドアの枠に立ち、両腕を肩の高さでフレームに付けます。
  2. 胸を前方へ押し出すように体をゆっくり前傾させます。
  3. 胸の中心から腕のつけ根にかけて伸びを感じたら、20〜30秒保ちます。
  4. 鋭い痛みを感じる場合は、可動範囲を小さくして調整します。

このストレッチは、大胸筋全体に均一に刺激を与え、姿勢改善に役立ちます。

背中で手を組む大胸筋ストレッチ

  1. 立った状態で両手を背中で組みます。
  2. 肩甲骨を寄せるようにして、両手を軽く上方に引き上げます。
  3. 胸を開きながら、息をゆっくり吸って30秒キープします。
  4. 肩をすくめないように注意し、徐々に元の姿勢へ戻します。​

この姿勢では僧帽筋と肩甲骨の動きが高まり、胸部の柔軟性も改善されます。

ストレッチ時の注意点

ストレッチでは勢いをつけず、呼吸に合わせて筋肉をゆっくり伸ばします。無理な姿勢や反動を加えると筋肉を痛めるおそれがあるため、心地よい範囲を保ってください。そして、大胸筋のストレッチと合わせて肩甲骨まわりを動かすことで、筋肉の血流が促され、巻き肩改善・再発防止効果が高くなります。​

肩甲骨を引き寄せる運動とその意義

肩甲骨を内側へ引き寄せる動作は、背中や肩甲骨まわりの筋肉(僧帽筋・菱形筋など)を鍛えて正しい肩の位置をサポートします。
日常生活では肩甲骨が外側に広がった姿勢が多くなりがちなので、意識的に内側へ寄せる運動(肩甲骨寄せ運動やローイング体操)を取り入れることが、巻き肩の改善・予防に効果的です。

基本的な肩甲骨寄せエクササイズ

  • 椅子に座り、脇を締めて両手を前に出します
  • 肘を曲げ、息を吐きながら両手を外側へ開きます(肘を支点に)
  • 肩甲骨同士をゆっくり寄せるイメージで、胸を自然に開きましょう
  • 10回を2~3セット、無理のない範囲で実施します
  • 姿勢は常にまっすぐを保つよう意識し、脇が開きすぎないよう工夫しましょう

肩甲骨と背中を柔軟に保つストレッチ

  • 背筋を伸ばして立ち、両手を後ろで組みます(または腰の高さでも可)
  • 肩甲骨を内側へ軽く引き寄せながら、組んだ手をゆっくり上げて10~15秒キープします
  • 胸を張る意識で行い、強い痛みは出さないように注意します
  • 1日数回、思い出したときに短時間でも継続することが大切です

睡眠時の姿勢管理と巻き肩対策

睡眠中も背中が丸まらない姿勢を意識し、適切な枕を使って首と頭を支えると背骨が一直線に保たれます。
仰向けや横向きで寝る際は、必要に応じて膝の間に枕を挟み、全身のアライメントが崩れないよう工夫しましょう。
これによって睡眠時の筋肉緊張や体のゆがみ防止に役立ちます。

行動習慣化のすすめ

肩甲骨運動や姿勢改善策は、一度で目覚ましい効果が得られるものではありません。日々の継続、習慣化が鍵となります。姿勢に気を付け、少しずつでも良いのでエクササイズを続ける。その積み重ねが、巻き肩からの脱却、予防という結果をもたらします。

専門家のサポートと継続の意識

セルフストレッチを続けても筋肉の硬さや痛みが残る場合は、専門家の評価や施術を受けると良いでしょう。理学療法士やボディケア専門家による姿勢分析では、筋肉の左右差や日常動作の癖を確認できます。

デスクワーク姿勢改善とエルゴノミクス環境の構築

改めて、特に重要なのはデスクワーク時の有り方です。その姿勢管理は、巻き肩の予防・改善に直結します。エルゴノミクス(人間工学)に配慮した作業空間を整えることで、筋肉への過剰負担を防ぎましょう。また正しい環境設定は、作業効率向上にも寄与します。

PC操作時の意識と取り組み

何と言っても、巻き肩の温床は長時間のデスクワークです。特にPC操作を長時間、連続で行っている人は多く、姿勢を悪くする人を大量に生み出しています。ここではPC操作時に絞って、ポイントをまとめます。

モニターの高さと距離の調整

モニターの画面上端を目線とほぼ同じ高さ、もしくは2~3cm下に設定します。モニターの中心が目線の10~15度下になるようにすると、首の角度を自然に保てます。目とモニターとの距離は約50cmを目安とし、首や肩の緊張が生じないよう意識しましょう。ノートパソコン使用時は、スタンドや書籍などを活用し高さを調整すると良いです。

椅子の高さと座り方

椅子は太ももと床が平行になり、足裏がしっかり床に着く高さに調整します。肘が机と同じ高さになり、腕が自然に90度の角度で置けるよう椅子の高さを設定します。椅子の形状は、腰の自然なカーブを支える背もたれやランバーサポート付きの椅子が推奨されます。正しい座り方、姿勢に良い椅子の使用により、巻き肩だけではなく、腰痛・肩こりの発生リスクも低減します。

キーボードとマウスの配置

キーボードとマウスは身体の近く、腕が自然に届き肘が90度に曲がる位置へ設置します。手首が自然な位置となるようキーボードトレイやリストレストを利用すると、手首や肩の負担が減少します。マウスはキーボードの隣に配置し、肘や手首が不自然な角度にならないよう調整しましょう。

定期的な休憩とストレッチ

長時間同じ姿勢で作業すると、筋肉の緊張が続きます。30分~1時間ごとに立ち上がり、肩回しや背伸びを実践し、血流と柔軟性を保ちましょう。首・肩・背中のストレッチは、巻き肩対策として特に有効です。

スマートフォン使用時の理想的な姿勢

スマートフォン操作時においても、身体への負担を最小限に抑えましょう。画面は目線の高さに近づけ、首や肩の前傾を防ぐことで、筋肉の疲労蓄積や巻き肩リスクの低減につながります。

画面位置の調整方法

スマートフォンを持つ際は、できるだけ画面を目の高さまたは顔の正面まで上げるよう心がけましょう。顎を軽く引き、首を曲げずに自然な姿勢で画面を見つめることで、首や肩への負担を抑えられます。座って使う場合でも、肘を机や太ももに乗せ、スマホを安定して支えられる位置で利用するとさらに効果的です。

スタンドやホルダー活用のメリット

長時間スマートフォンを使用する場合は、スタンドやホルダーによる固定が姿勢保持に有効です。机やベッドフレームに設置できるクリップ式スタンド、角度調節可能な卓上タイプを使うことで、画面高さの調整が容易になります。
手持ち時間が減れば、腕や肩の筋肉疲労も予防できます。

長時間使用時の休憩とストレッチ

スマートフォン操作が長時間に及ぶ場合は、20分ごとに20秒間画面から目を離し、遠くを見渡す「20-20-20ルール」が推奨されます。このタイミングで肩・首回しや背伸びなどの簡単なストレッチも取り入れると、筋肉の緊張緩和や血流促進につながります。目への負担も減るため、集中力や疲労度の改善も期待できます。

手の持ち方と筋肉の緊張管理

スマートフォンを操作する際は、片手持ちに偏らず両手で支える、あるいは持つ手をちょくちょく入れ替えましょう。手首・腕・肩の緊張が続かないよう、姿勢チェックと筋肉の力み解放を意識します。ゲームや長時間入力では、脇を締めて肘を胸の上に置く姿勢が手首への負担を減らします。

一義流気功治療院では、巻き肩にどう対応するの?

それでは一義流気功治療院では、巻き肩にどう対応するのでしょうか。丁寧に筋硬直を解放する、独自のメソッドがあります。

ねこ背と巻き肩はセット

ねこ背と巻き肩は、セットになっています。まず前屈みの悪い姿勢を取り続けている内に、筋肉がその形で固まってしまいます。肩甲骨が左右に広がり、肩関節が前に出される。これで、巻き肩の完成です。

ちょっと試してみてください。背筋が伸ばした状態で肩甲骨を左右に広げようとしても、難しいですよね。出来ないことはないですが、意識しないとその状態を維持できません。今度は前屈みになって、同じように肩甲骨を左右に広げます。今度は、楽に簡単にできたと思います。力を抜いていれば、ずっとその形でいられます。……ねこ背と巻き肩がセットだという理屈が、何となくでも体感できたのではないでしょうか。

巻き肩を治すには、広範囲の筋肉にアプローチする

治療では、直接、筋肉の硬直をゆるめる方向性が中心になります。ここで巻き肩の部分だけを意識しても、上手く行きません。背骨上部の丸まり、失われた背骨のS字カーブ、左右に広げられた肩甲骨、左右側面でカーブを急にした肋骨など、全体として修正していく必要があります。

例えば、肩甲骨付近をゆるめても、背骨や肋骨がガチガチに固まっていたなら、肩甲骨も動かせません。肩甲骨が動かなければ、前に出ている肩も引っ込みません。それら全てを広範囲にゆるめて連動させるから、姿勢全体が修正され、その中に巻き肩も含まれるのです。

潜在意識から情報を引き出す

潜在意識は、自分では認識できない精神領域を指します。潜在意識には自身の心と体についての、詳細な情報があります。ねこ背、巻き肩であるなら、その状態も認識されています。そこで、治療でゆるめる筋肉の優先順位、日常で改善するための過ごし方など、必要な情報を引き出します。

こうして一人一人、丁寧にねこ背と巻き肩を治していきます。必要であれば、ここに物理的な矯正も加わります。

まとめ、結論

ねこ背と巻き肩は、長時間のデスクワークやスマートフォン操作により前かがみ姿勢が続き、胸の筋肉が縮み、背中や肩甲骨まわりの筋力が固まって生じる姿勢の歪みです。ねこ背・巻き肩でいると胸が圧迫され、呼吸が浅くなりやすく、自律神経の乱れや集中力の低下にもつながります。また筋肉や関節への負担を広げ、慢性的な肩こりや首痛、疲労感などを引き起こします。これらは見た目だけでなく、体全体の健康、メンタルにも悪影響を波及させます。

一義流気功治療院では、背骨や肋骨、肩甲骨の連動性を広範囲で修正します。巻き肩を治すというより、姿勢全体を修正する中で、巻き肩も含まれる形です。

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