現代社会において、猫背と肩こりは切っても切れない関係にあります。デスクワークやスマートフォンの長時間使用が日常的となった今日、多くの人々がこれらの問題に悩まされています。本記事では、猫背と肩こりの関連性、その原因、そして効果的な改善方法について詳しく解説していきます。
猫背になると、なぜ肩こりになるの?

猫背とは?
猫背とは、その見た目の通り、頭が前に出て背中が丸まっている状態です。重い頭を首、肩、背中の筋肉で支え続けて過度な負担がかかり、筋肉が硬直、肩こりになります。意識して伸ばそうと思えば伸ばせる軽度なものから、大きく曲がってコブのような形で固まり戻せなくなる重度なものまで、広く猫背と呼ばれています。
肩こりは、どうやって起こる?
肩こりは、主に肩周りの筋肉が緊張し、血行が悪くなることで起こります。具体的には、僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋などの筋肉が過度に緊張し、筋肉内の血流が滞り、老廃物が蓄積。これによって筋肉が硬くなり、痛みや不快感を感じるようになります。猫背の姿勢では、これらの筋肉が常に緊張状態にあるため、肩こりを引き起こしやすくなります。
猫背が肩こりを引き起こす具体的なメカニズム
筋肉の不均衡
猫背姿勢では、大胸筋が短縮し、背中の筋肉(僧帽筋や広背筋)が引き伸ばされる形になります。この筋肉の不均衡が、肩こりの原因となります。長期間この状態が続くと、筋肉の柔軟性が失われ、さらに姿勢を悪化させる悪循環に陥ります。
血行不良
不良姿勢によって肩や首の血流が悪くなると、筋肉に十分な酸素や栄養が供給されず、疲労や痛みが生じます。特に長時間、同じ姿勢でいると筋肉内の血液循環が滞り、老廃物の蓄積が進みます。
肩甲骨の動きが制限される
猫背姿勢では肩甲骨の動きが制限され、肩周りの筋肉がさらに緊張します。肩甲骨は本来、腕を動かす際に滑らかに動く必要があります。しかし猫背姿勢ではこの動きが制限され、肩関節の可動域も狭くなり、さらなる筋肉の緊張を招きます。
呼吸が浅くなる
猫背姿勢では胸郭が圧迫され、深い呼吸が困難になります。浅い呼吸は筋肉への酸素供給を減少させ、疲労や痛みをさらに悪化させる可能性があります。
人はなぜ、猫背になるのか?

姿勢意識の誤り
多くの人が、良い姿勢を履き違えています。力を入れて背筋をピンと伸ばしている状態を、良い姿勢と認識しています。けれどもそんな意識して力んだ状態を、常に維持できるはずはありません。仮に出来たとしても、今度は筋肉疲労で別の意味でおかしくなります。では悪い姿勢とは、逆にどんなものなのでしょうか?それは正しい姿勢とは対で、楽に力を抜いた状態です。
楽に力を抜いたら姿勢が悪くなる。良い姿勢は頑張って取るもの。このように姿勢についての認識が歪んでいたら、油断をしたら猫背になるのでは、それは猫背だらけになって当然です。
スマホの影響
もはや日常生活でも仕事でも必需品になったスマートフォン。これ一台で様々なタスクをこなせるとあって、使用時間が長くなるのは避けられません。そこで下を向き続けていると、当然、猫背の原因になります。
デスクワークの影響
現在のデスクワークは、PC操作がメインになっています。長時間、座り続けて前屈み姿勢を取っていれば、やはり猫背の原因となります。これはモニター、マウス、キーボードの高さで事情が大きく変わってきます。
何か作業をする時は、基本的に前屈みが多い
スマホとPC操作を代表例としてお伝えしましたが、人間が何かをする際には、基本的に前屈みが多いです。本を読む、字を書く、料理や洗い物をする、掃除機をかけるなど。逆に、背中を後ろに反らせる機会は、体操やストレッチでもしない限りはそうはありません。こうして前屈み時間の負荷が合計され、猫背の原因が積み重なって行きます。
性格、精神状態の影響
名は体を表すという言葉がありますが、それと似て姿勢はメンタルを表します。人は半ば無意識に、自分の性格や精神状態を姿勢に反映させています。自信満々の人は胸を張って上を向きますし、自信がない・落ち込んでいる人は下を向きます。前屈みでいる内に固まってしまう他にも、自信のなさや落ち込みが前屈み姿勢を作っているケースもあります。
一晩の睡眠で、修正しきれない
睡眠中、仰向けになっていれば、前屈みで固まった筋肉が緩みながら伸ばされます。日中での借金を、寝て返しているイメージです。ですが困ったことに、年齢を重ねる毎にその収支が合わなくなっていきます。加齢によって筋肉は硬くなりやすく、緩み難くなるのです。すると若い頃は一晩の睡眠で返せていた借金が、返済が不十分で次の日に持ち越し、その次の日も持ち越し……と繰り返している内に、気付けば背中が丸まり、多額の借金を背負っています。
また横に向いて丸まって寝る人では、当然、話が変わってきます。睡眠時間、睡眠の深さ、血流の良い悪い、といった違いで、どれほどの修正が出来るのかが決まります。
その他、ライフスタイル
猫背になるのも、酷く肩がこって慢性化するのも、一つの理由だけではありません。確かに、ある人にとってはスマホのやり過ぎは原因かもしれませんが、理由はライフスタイル全体の合計値です。ですから例えばそこに、軽くウォーキングして、ぬるま湯のお風呂にゆったりと浸かって、といった習慣があるなら、結果は違っています。
単独で一つ一つの理由を捉えていくと同時に、ライフスタイル全体の合計という枠組みを捉え方の基盤にしてください。
猫背、肩こりがもたらす怖い悪影響

体の悪影響
腰痛
猫背は腰への負担も増加させ、腰痛のリスクを高めます。特に背骨のS字カーブで腰の凹みが失われれば、腰の筋肉に過度な負担がかかります。そこから腰痛を発症させ、慢性化します。
頭痛
首や肩の筋肉の緊張は、頭痛の原因となります。特に、後頭部から首にかけての緊張性頭痛は、猫背姿勢と関連しているケースが多いです。
疲労の蓄積
頭、首、肩、背中、腰の硬直は、少しの疲れでも感管的に疲労感を増大させます。また全身の血流が悪くなり、酸素や栄養の供給、老廃物の除去を妨げ、疲労回復が遅れます。
呼吸が浅くなる
猫背姿勢は、意識的に深呼吸をすれば吐く時の形です。ただ猫背というだけで、吸える量が小さくなります。また肺を収縮させる筋肉が硬直し、深い呼吸が出来なくなります。
血流が悪くなり、体が冷える
筋肉の硬直は、単純にそれだけで血流を悪くさせます。猫背では首、肩、背中、腰と硬直も広範囲になるため、全身レベルで血流が阻害されます。それに連れて手足の末端が冷えやすくなり、酷くなれば体温計でみる体温も下がります。
内臓への悪影響
猫背により、内臓のおさまる空間が狭くなるため、様々な内科疾患のリスクが高まります。特に、消化器系の問題(胃酸の逆流など)や呼吸器系の問題(肺活量の低下)などが発生しやすくなります。
骨格の歪み、痺れ
猫背が悪化すると、背中の曲がったお年寄りのように変形して戻せなくなります。また側弯症、脊柱管狭窄症などに繋がる恐れもあります。神経の圧迫から手足などが痺れるケースもあります。こうなれば、状態としてはかなり深刻です。
精神の悪影響
集中力と気分の低下
慢性的なコリや痛みの不快感は、常に集中力と気分のマイナス圧力になります。慣れてしまえば、ある程度は気にならなくなりますが、決してゼロにはなりません。
落ち込み、自信の喪失
人は精神状態に合わせて無意識に姿勢を取りますが、姿勢からも精神に影響を及ぼします。猫背でうつむいた姿勢は、落ち込み、自信のない人そのもの。勿論、姿勢によって精神状態の全てが決まる訳ではありません。一割か二割、余分に下げられるイメージで捉えてください。
社会的影響、他人からの評価
猫背というだけで、印象が悪くなります。頼りない、弱々しい、卑屈に感じられ、見えない形で悪影響を及ぼしています。商品やサービスで成約率が低い、恋愛対象としての評価が低い、といった悪影響は因果関係が見え難いものです。
猫背、肩こりの改善方法

猫背
姿勢意識の修正
背中の骨が曲がって戻らない状況では話が別ですが、姿勢は意識一つで変わります。
キーワードは、重心です。立っている時、足裏のどこに重心があるのか、それで姿勢の全てが決まります。結論から申し上げますと、正しい姿勢の正解はかかとの少し前の内側、脛の太い骨(脛骨)の真下です。
ここに重心を置くと、骨格で自然と立つ形になります。すっと背中が伸び、無理に背筋を伸ばす必要もありません。
では、猫背の人はどうなっているのでしょうか?例外なく、重心がこの正解から前にズレています。前にズレるから、腰を後ろに引いてバランスを取ろうとする。その形で力を抜くと、猫背になります。よく、「意識して姿勢を良くしても、気を抜くと猫背に戻ってしまう」と悩む人がいますが、この重心の間違いが原因です。
正しい重心では、逆に猫背になれません。力を入れて多少は前屈みになれますが、良い姿勢でいた方がよほど楽です。重心で姿勢の全てが決まるという意味が、伝わりましたでしょうか。
詳しくは、ご紹介する著書にあります。宜しければ、お手に取ってみてください。
こうして意識を変えて正しい重心をおく習慣だけでも、歪んだ骨盤が逆に引っ張られて、正しい位置に戻ってくれます。ただ骨盤を歪ませる硬直が強固だと、姿勢の意識だけでは足りないケースもあります。その場合には、以下でご説明するストレッチと筋トレもお試しください。
メンタルの改革
自信がない、落ち込んだ状況では、無意識に猫背であろうとします。猫背でいた方が気持ちとしっくり来て、むしろ楽なんです。逆に姿勢を良くしていると、落ち着かない感覚になります。こうした人の場合、メンタルの方から改革していく必要があります。全てを書こうとすると本一冊にまでなる内容ですが、ここではその中でも効果の高い、普遍性のある方法をお伝えします。
無理のないデイリーミッションをこなしていく
仕事でも自分磨きでも何でも良いので、建設的に毎日を積み重ねて行きましょう。当然、建設的ですから現実の成果にも繋がります。その実績が、「自分は出来る」という自己評価になります。ポイントは、無理なくです。ミッションが厳し過ぎると、挫折してしまいます。ちょっと物足りないくらいが、ちょうど良いです。
休息をしっかりと取る
メンタルの問題かと思ったら、実は体だったというケースは意外に多いものです。オーバーワークで休息が足りず、慢性的に疲労している、元気が出ない、という状況であれば、単純な話、よく眠ったら解決します。
心の傷と向き合う
これは難易度が高く、サラっと試せるものではありません。ただ人によっては必要な過程になりますので、触れておきます。心の傷が癒されずに溜まると、精神状態を落とします。一つ一つ、ちゃんと向き合って、落ち込む、悲しむ、怒るという過程が重要です。これらの感情はマイナスに捉えられていますが、その本質は心の傷を癒す手段です。
ストレッチ、筋トレ
ストレッチ、筋トレの種類は数多くありますが、ここでは絶対に間違いのない確実に高い効果のあるものをご紹介します。
背中全体のストレッチ
1.バランスボールの上に仰向けに横になり、胸を開くのを意識して、力を抜いて両腕をだらんと横に下げておきます。そのまま足を使って、前後にゴロゴロと行ったり来たりしてください。バランスボールの曲線に合わせて、背中にストレッチがかかります。
2.四つん這いになって両手をつき、膝を伸ばしながら背中を反らせます。これをゆったりと繰り返します。
肩甲骨ストレッチ
- 両肘を曲げ、肩より少し上に上げます。手は軽く握り、鎖骨付近に置きます。
- 息を吐きながら、両肘を後ろに引きます。この際、肩甲骨を寄せるイメージで行います。
- 肘を下げながら肩甲骨を寄せたまま脱力します。
気が向いた時に、何度かこれを繰り返してください。その後、肩甲骨をグルグルと回す体操を入れても効果的です。肩こりの多くは、肩甲骨の内側がコリの起点になっています。ここをほぐす事で、広範囲に効果が波及します。
シュラッグ
- 立った姿勢のまま、力を抜いて両手を垂らします。
- 肩甲骨を引き上げる要領で、肩を引き上げて下ろします。これを数回、繰り返してください。
主に僧帽筋を鍛える筋トレですが、肩甲骨を動かすので肩こりの解消にも即効性があります。ダンベルやバーベルなどを持って負荷をかけるのが通常ですが、何も持たなくても肩こり解消には効果的です。そういった器具をお持ちでない方は、ペットボトルに水を入れるなど、試してみてください。
ウォーキング
部分的な筋トレやストレッチには即効性がありますが、土台として重要なのは全身の血流です。全身の血流が悪いと、それに飲み込まれる形ですぐにコリが再発します。逆に、全身の血流さえ良ければ、肩こりもそう深刻には悪化しません。
全身の血流を良くするには、やはり全身を使った有酸素運動です。少し急ピッチに、体全体がポカポカとするまでウォーキングをしてください。促進された血流がコリを解消し、楽になるはずです。その上でその他の筋トレやストレッチを行うと、さらに効果的です。ここではハードルを下げるためにウォーキングにしていますが、勿論、負荷を上げてジョギングでも同じ理屈です。
職場、生活環境の改善

肩こりも猫背も、足し算と引き算の合計の結果です。職場と日常生活の環境、習慣を修正して、姿勢とこりを改善、予防に繋げていきましょう。
PC操作
もっとも重要なのは、モニターの位置です。これが低いと見下ろす形になり、前屈み姿勢を作ります。モニターの位置を上げて、背筋を伸ばして作業するのに自然な高さに調整してください。ただノートパソコンだと、キーボードの位置も上がって操作し難くなるかもしれません。その場合には、外付けのキーボードを別に繋げてください。
少数派ですが、立ち食い蕎麦のようにテーブルを上げて、立った状態で作業をする人もいます。これも一つの選択肢です。
ちょくちょく、猫背姿勢をリセットする
仕事でも家事でも、どうしても前屈み姿勢が避けられない時も多いです。肉体の構造上、まあ当たり前と言えば当たり前です。
ここで重要なのは、前屈みの形で筋肉を固めてしまわないこと。ちょくちょくと背筋を伸ばして、猫背姿勢をリセットしてください。上体を伸ばして軽くストレッチくらいの動きであれば、職場でも何の違和感もありません。たまに立ち上がって、少し歩くのも良いです。
運動と入浴習慣
運動不足、入浴で十分に体を温めないのは、血流を悪くする原因です。一日に一回は、ウォーキングなどで血液を回してください。また入浴のポイントは、温度設定と時間です。38~39度の設定で連続で30分以上が、血流を良くする上で効果的。40度以上だと皮膚が締まって、芯まで熱が通り難くなります。
睡眠の質と時間
睡眠は、疲労した筋肉を回復させる重要な機会です。ここで回復が不十分だと、筋疲労と硬直を次の日に持ち越してしまいます。負債が溜まれば、肩こりも猫背も深刻化します。
まず大前提に、眠れる・眠れないは別問題として、十分な睡眠時間の枠を確保してください。ショートスリーパー、ロングスリーパーで事情は違いますが、一般論で言えばやはり7時間は欲しいです。
眠りにつく、深く眠るには、自律神経で副交感神経に大きく入ることが必要になります。ある程度は体を動かして、程よく疲れている。出来るだけストレスを減らしておく。眠る前に脳を興奮させない。寝る三時間前くらいから、照明も暗くしてゆったりとした時間を過ごす。など、眠りに良い環境を作りましょう。先ほどお伝えした38~39度の入浴は、眠る前に行うと、この意味でもより効果的です。
一義流気功での取り組み
姿勢の意識、歩き方の指導などを行います。また筋肉と骨格の状態を見て、緩める治療、必要であれば矯正も行います。ほとんどの方が、初回、その場で変化を実感します。猫背が治れば、慢性的な肩こりも自然と軽減します。
結論とまとめ
猫背と肩こりは、現代社会において非常に一般的な問題です。これらの問題は単に身体的な不快感を引き起こすだけでなく、全体的な健康状態や生活の質にも影響を及ぼします。猫背が肩こりを作り、肩こりが猫背姿勢を固めてしまう。固まった猫背姿勢が肩こりを悪化させる。その肩こりがまた……という悪循環が生じます。
改善策としては、まず姿勢の意識が重要です。デスクワークやスマートフォン使用時には、正しい姿勢を保つための工夫が必要です。またストレッチや運動を定期的に行うことで、筋肉のバランスを整え、姿勢を改善することができます。特に、肩甲骨周りのストレッチとウォーキングは効果的です。
職場、生活環境全体にも、留意しましょう。肩こりや猫背姿勢を悪化させない環境と習慣の中、日々を送ってください。
猫背と肩こりは、正しく対策すれば必ず結果が出ます。またそれは心身全体の健康にも、直接的、間接的に繋がります。この記事をご覧になった今から、意識を更新して実行してください。

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