不定愁訴とは、原因のわからない体調不良を指します。症状も身体的な不調から、精神的なものまでさまざまです。原因が特定できないといわれる不定愁訴ですが、関連性が指摘されていることや、症状に影響を与えると考えられていることがあります。この記事では、不定愁訴の詳細と症状を軽減するための方法について解説します。
原因不明の不定愁訴とは
不定愁訴は、体調不良を感じて病院で検査を受けても原因が特定できない状態を指します。「愁訴」は「しゅうそ」と読み、苦しみや違和感を口に出して訴えることを意味しています。不定愁訴は「原因がない」のではなく「原因を特定できていない」状態です。そのため症状に応じた医療機関での相談が推奨されます
不定愁訴は、さまざまな症状が現れることが特徴です。症状は、腹痛やめまいなどの身体的なものとイライラ感や不安などに代表される精神的な症状に分類されます。
不定愁訴の身体的症状
身体的症状には、以下のような全身症状や部分的な症状があります。
全身症状
- 疲労感・倦怠感
- だるさ
- 微熱
- 体のふらつき
- 食欲不振
- 易疲労感
感覚器の症状
- 頭痛・頭重感
- めまい
- 耳鳴り
- 味覚異常
- 目の疲れ
- 口の渇き
四肢・筋骨格系
- 肩こり
- 手足のしびれ
- 冷え
- 関節の痛み
- 筋肉の脱力感
循環器系
- 動悸
- 胸部圧迫感
- 立ちくらみ
- 血圧・脈拍の変動
消化器系
- 吐き気
- 腹痛
- 便秘・下痢
- 胃部不快感
- お腹の張り
不定愁訴の症状は一定ではなく、日によって変化したり、長期間同じ症状が続いたりします。複数の症状が同時に、あるいは入れ替わり現れることもあります。また、検査をしても明確な身体的異常が見つからないことが多いのも特徴です。
不定愁訴の精神的な症状
不定愁訴の精神的な症状には、以下のようなものがあります。リラックスできる時間や安心できる時間が減った、気持ちに余裕がない、以前よりもミスが増えたなどの変化にも注目しましょう。
情緒面の症状
- イライラ感や不安感が強く現れる
- 気分の落ち込みや憂うつ感がある
- 情緒不安定な状態が続く
認知機能への影響
- 集中力の低下が見られる
- 注意力が散漫になる
- 判断力や思考力の低下を感じる
睡眠への影響
- 不眠や睡眠障害が現れる
- 寝つきが悪くなる
- 睡眠の質が低下する
特徴的な性質
- 症状は一定ではなく、日によって変化する
- 複数の症状が同時に出現することがある
- メンタル疾患(うつ病や不安障害など)の初期症状の可能性
不定愁訴は病院の何科?
不定愁訴は「よくあること」や「気のせい」と決めつけないことが大切です。早期に受診することで、様々な疾患の早期発見と進行防止につながります。ここでは、不定愁訴で受診する場合、病院の何科を選択するべきかについて説明します。
外来受診は症状に合わせて選択する
不定愁訴で医療機関を受診する際には、症状に応じて専門外来や内科、心療内科などを選択します。
最初の受診先
基本的には、最初に一般内科を受診します。強い症状がある場合は、症状に応じた専門外来を受診することも選択肢となります。一般内科のみがある医療機関の場合は、循環器、消化器の身体症状であっても一般内科で受診が可能です。
- 一般内科
疲労感や倦怠感、微熱、食欲不振などの全身症状の場合 - 循環器内科
動悸、立ちくらみなどの場合 - 消化器内科
吐き気、便秘、下痢、腹痛など胃腸系の症状がある場合
イライラや不安など、精神的な症状がつらい場合は、心療内科や精神科を受診しましょう。
現在は、男性、女性どちらも更年期症状の不定愁訴が増加しています。40代以降の場合、更年期症状の可能性も考えられます。更年期症状として受診を検討する場合、男性は内科や心療内科が選択肢となります。女性は婦人科を受診します。
身体的な原因がない場合
内科等で検査をしても異常が見つからない場合は、心療内科や精神科への受診を勧められる傾向があります。心療内科は、医師との会話が治療の基本となります。話しやすい医師を探し、相談することで不安がやわらぐ場合もあります。
不定愁訴を軽減する方法
不定愁訴は、生活習慣の乱れ、心身のストレス、ホルモンバランスの乱れ、自律神経の失調などが影響しているといわれています。特に女性は、ホルモンバランスの影響を受けやすく、体内のあらゆる働きをコントロールしている自律神経が不調になることで体調不良を引き起こしやすい傾向にあります。そのため、以下のようなセルフケアがおすすめです。
生活習慣の改善
生活習慣の改善は不定愁訴の症状の軽減に役立つ場合があります。特に運動は自律神経のバランスを整え、ストレス解消をサポートします。ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなどの有酸素運動を、無理のない範囲で継続的に行うことが推奨されます。また、規則正しい生活リズムを保ち、十分な睡眠時間を確保することも重要です。
リラックス法の実践について
心身のリラックスは不定愁訴の症状軽減に重要な役割を果たします。ヨガやマインドフルネス、深呼吸などのリラクゼーション技法は、ストレスを軽減し、自律神経のバランスを整えることをサポートします。特に呼吸法は、いつでもどこでも実践できる手軽な方法で、緊張やイライラをやわらげることに役立ちます。
医療的なアプローチとしての漢方
医療的なアプローチでは、漢方薬の活用が注目されています。医療機関で処方される漢方薬は、それぞれの症状に応じて使い分けることで体調を整え、医療機関での治療を補助する役割を持ちます。
補完療法について
補完療法とは、医療機関での標準治療と併用される療法です。西洋医学に相補、代替療法や伝統医学を組み合わせることで、QOL(生活の質)を向上させることを目的としています。マッサージ療法やヨガ、鍼灸治療などがあり、担当医と相談しながら取り入れることが推奨されます。
食生活の改善について
食生活の改善は不定愁訴の予防と改善に重要な役割を果たすといわれています。特にたんぱく質、鉄分、ビタミン類をバランスよく摂取することが求められます。また、カフェインや刺激物の過剰摂取を控え、規則正しい食事時間を守ることで、体調管理がしやすくなります。
簡単なセルフケア
続いて、自宅でできる簡単なセルフケアを紹介します。
気功法
スワイショウは、いつでもできる簡単な運動でリラックスしたいときにおすすめです。
スワイショウ(腕振り気功)
- 腕を前後または左右に振る簡単な動作
- 1日2-3回、3分間(約150回)から始める
- 血行や体の軸を整える
入浴
入浴時間をリラックスタイムとして活用することもできます。ストレスを軽減し、睡眠の質を向上させることに役立ちます。
- 入浴30分前に200-300mlの水分を補給
- お気に入りの入浴剤を使用する
- かけ湯を手足の先から体の中心部へ行う
- 温度は37-40℃のぬるめのお湯
- 時間は10-15分程度
- 首までつかる全身浴(体調に応じて半身浴も可)
好きなお茶を飲む時間を作る
好きなお茶やコーヒーなどを飲む時間を作ると、気持ちに余裕ができます。有名な産地の紅茶やお茶、手軽なドリップコーヒーなどを試して、美味しいと思える飲み物を探してみましょう。
まとめ
不定愁訴とは、体調不良を感じて病院で検査を受けても原因が特定できない状態を指します。成人の20~30%が経験しているといわれ、身体的症状(頭痛、めまい、だるさ、冷え、むくみなど)と精神的症状(イライラ、不眠、気分の落ち込みなど)がさまざまな形で現れることが特徴です。
医療機関を受診する場合、不定愁訴は一般内科となりますが、症状に合わせて専門外来を受診することも選択肢となります。検査により身体的な面で異常なしとされる場合は、心療内科や精神科を受診します。精神的な症状が強い場合は、最初に心療内科を受診することも可能です。
症状の軽減には、適切な休息、運動習慣の継続、十分な睡眠時間の確保、バランスの良い食事など、生活習慣の改善が重要です。また、不定愁訴の症状が続く場合は「気のせい」と片付けず、早めに医療機関を受診しましょう。
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