子どもの不定愁訴が近年増加傾向にあります。不定愁訴は、頭痛やおなかの痛み、イライラ感など、明確な病気の原因がないにもかかわらず様々な不調が現れる状態を指します。従来は更年期の女性に多いとされていましたが、学校生活や家庭環境のストレスから、小学生から同様の症状が見られるようになってきました。この記事では、子どもの不定愁訴の特徴と原因、対処法について解説します。
子どもの不定愁訴の症状
原因が特定できない不調を、不定愁訴と呼びます。ここでは、子どもの不定愁訴とは何か、その具体的な症状について説明します。
子どもの不定愁訴とは
子どもの不定愁訴とは、病気などの明確な原因がないにもかかわらず、様々な身体の不調が現れる状態を指します。従来は更年期の女性に多いとされていましたが、近年では小学生にも同様の症状が見られるようになってきました。特に中学生など思春期の年齢層で増加傾向にあり、学校生活や家庭環境のストレスが背景にあることが指摘されています。
具体的な症状
不定愁訴の具体的な症状は、大きく身体的な症状と精神的な症状の二つに分類されます。
身体的な症状
身体的な症状としては、頭痛やおなかの痛みが最も一般的です。また、夜眠れない、朝起きられないなどの睡眠障害や、全身のだるさを訴えることも多く見られます。さらに、学習中やスマートフォンの使用中に姿勢が悪くなることで、肩こりや首の痛みを感じる子どもも増えています。食欲不振も特徴的な症状の一つで、給食を残したり、好きな食べ物も食べなくなったりすることがあります。
精神的な症状
精神的な症状では、些細なことでイライラしたり、感情的になったりする様子が見られます。また、吐き気やむかつきを感じることも多く、これらは精神的なストレスが身体症状として現れた状態といえます。
一人になりたいという願望も特徴的で、友達や家族との交流を避けようとする傾向が出てきます。さらに、普段は興味を持っていた活動にも意欲を示さず、全般的な「やる気」の低下が見られることもあります。
症状は変化する
これらの症状は一定ではなく、変化することが特徴です。症状は単独で現れることもありますが、複数の症状が同時に、あるいは入れ替わりながら現れることもあります。
子どもの不定愁訴の原因
子どもの不定愁訴は、以下の4つが影響しているのではないかとされています。
心理的ストレス
学校生活におけるストレスは、不定愁訴の主要な原因の一つとされています。特に学業の負担や成績への不安、友人関係のトラブル、授業についていけない悩みなどが大きな影響を与えています。周囲が気づきにくい「いじめ」などの問題が隠れている場合もあります。
家庭環境では、夫婦げんかなどの家庭内ストレスや親子関係の問題、引っ越しなどによる生活環境の変化が子どもの心身に影響を及ぼすことがあります。
生活習慣の乱れ
近年の子どもたちの生活習慣の乱れも、不定愁訴の発症と密接に関連しています。特に睡眠に関する問題が顕著で、夜型生活による睡眠時間の不足や、就寝前のスマートフォンやゲームの使用による睡眠の質の低下が見られます。また、不規則な睡眠パターンも体調不良の原因となる可能性があります。食生活においても、朝食の欠食や偏った食事内容、不規則な食事時間などが問題となっています。
発達段階特有の要因
思春期特有の変化も不定愁訴の重要な要因です。第二次性徴による身体的変化や、自我の確立過程でのストレス、心と体のバランスの不安定さなどが、様々な症状として現れることがあります。この時期は特に心身の変化が著しく、環境からの影響を受けやすい状態にあります。
社会的背景
現代社会特有の環境も子どもの不定愁訴に影響を与えています。情報化社会の進展により、子どもたちは常に多くの情報にさらされ、それがストレスとなることがあります。また、社会全体の生活リズムの夜型化や、スマートフォンやゲームの普及による運動不足なども、不定愁訴の背景として考えられます。これらの要因は互いに関連し合い、複合的に作用して症状を引き起こすことが特徴です。
子どもの不定愁訴の対応方法
不定愁訴を抱える子どもへの対応は、医療機関での受診と、家庭内支援の両面から進めていく必要があります。
医療機関を受診する
小学生は小児科を受診し、最初に身体に異常がないかを確認することが重要です。中学生の場合は、かかりつけの小児科、もしくは内科での受診が可能です。高校生は内科での受診が目安です。
特に、精神的な症状が強い場合は、専門外来(心身症外来、心療外来、心理外来など)のある医療機関での診察が望ましいとされています。医師との相談では、学校での様子など、子どもの日常生活に関する情報も伝えることが大切です。受診前に、症状が現れることが多い時間や症状が続く期間、どのような症状が多いかなど、メモをとっておくと説明がしやすくなります。
生活習慣の改善
生活習慣の改善を、できることから始めることもおすすめです。
睡眠の管理
睡眠時間は、小学校低学年で9~10時間、高学年から中高生は8~9時間を目安に確保します。就寝前のテレビやゲーム、スマートフォンの使用は控え、落ち着いた環境で眠れるようにすることが重要です。
食事への配慮
朝食をしっかりとることで、体を活動モードに切り替えることができます。また、できるだけ家族で食事を共にする機会を設けることで、子どもの食欲や表情の変化にも気づきやすくなります。
心理的サポート
子どもの話に耳を傾け、問い詰めを避けながら支援することが大切です。「困ったことがあればいつでも相談に乗るよ」という姿勢を示し、子どもが安心して話せる環境をつくります。特に「いじめ」の問題を親に話すということは、子どもにとって非常に勇気が必要なことです。子どもの意思を尊重することや子どもの味方であるという態度を示すことが重要です。
学校との連携
担任の先生と連絡を取り、学校での様子を把握するという方法もあります。学習の遅れが気になる場合は、ノートや宿題の状況を確認し、必要に応じて一緒に復習するなどの支援を行います。状況をしっかりと把握し、必要な支援を行うことで、体調が良くなった際にスムーズに復帰することが可能になります。また、インターネットの学習ツールを活用するなど、通学できない場合にも、無理をせずに、できることを探すことが大切です。
家族の対応
家庭でのストレスが子どもの体調不良の原因となることもあります。夫婦げんかなどは避け、やむを得ず行った場合は「仲直りした」ことを必ず伝えるようにします。また、親自身のストレス管理も重要です。時にはリフレッシュすることも必要です。親の心理的な余裕が、子どもを守ることにつながります。
まとめ
子どもの不定愁訴は、原因がはっきりとわからないことが特徴です。しかし、何らかの精神的な負担、不規則な生活による身体的な負担が、体調のバランスを崩している可能性があります。まずは、医療機関で身体的な原因がないかを調べることが大切です。
不定愁訴と診断された場合は、心理的なストレスの軽減や生活習慣の改善などで対処してみましょう。大切なことは、つらい症状があるという事実を受け止めてあげ、子どもに安心感を与えることです。
また、子どもを守るには、親にも余裕が必要です。子どもの不定愁訴に悩むあまり、余裕をなくさないよう注意し、適度に自分自身の気持ちもリフレッシュしましょう。
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